大丸百貨店

お盆はとかく人が多いので、先週末に早々に田舎のおじいちゃんおばあちゃんと過ごした園児が何人かいました。保育園の子どもたちのおじいちゃんおばあちゃんは、まだ若いので、たくさん遊んでもらいます。そして、今日は初めてプールボランティアに挑戦するパパが頑張りました。毎日、ボランティアのパパママが来てくれるので、子どもたちは、会話までも楽しんでいます。初めての場合は「誰のパパ?」と質問攻めです。(笑)

 

さて、今日は百貨店の話です。大丸百貨店社長、大丸と松坂屋が統合して誕生したJフロント社長などを経て、この5月に第一線を退いた山本良一さんの営業改革を振り返ります。

 

私の前の仕事は、百貨店に出入りする洋菓子メーカーでした。営業として、バイヤーや食品部長、食品課長相手に、話術もプレゼンテーションも簡単にいかない得意先の一つが、大丸百貨店でした。大丸は、関東には東京駅にしかないのですが、商談の前には、「相手がこうきたら、この作戦で切り返す」など、しっかりとイメージ戦略を行った記憶があります。やり手の食品課長の誕生日に「あなたは、将来の大丸を担うキーマンになるから、このキーケースをプレゼントします」とダジャレのような作戦が成功したこともあります。その課長からは、一気に信頼を得ました。しかし、食品部長からは、ケース1台あたりの販売効率が悪いとボコボコに言われ、販売ケースを1台減らされたこともありました。このときは、どんな理論武装も通用せず、完敗でした。(笑)

 

こんな大丸の風土を作り上げた男が、山本良一さんです。山本さんは、1998年に当時の大丸社長から「営業改革をやれ。最大の顧客満足を最少のコストで実現するため、すべての業務を見直せ。3か月で計画を作り、5月中旬に店長会議があるから、そこへ出せ。後はお前に任せる」

 

当時、百貨店業界は、高コスト体質の代表です。百貨店以外の業種、専門店などの台頭から、もう、百貨店は生き残れないのではという危機的状況でした。

 

山本さんは、長い間百貨店は「勘と経験と度胸」という古い考え方に依存してきたと言います。そこで、納得できるデータを集めるために、管理職・売場リーダー・販売員ら全員に、1日に使っている時間をアンケート調査したのです。「あなたは何時に出勤し、最初にやることは何ですか?」「それを何分やりましたか?」「接客は何時間しましたか?」「会議は何分ありましたか?」という具合に、1日の接客、食事、会議などの時間を1か月分出してもらったのです。

 

百貨店で最も利益を生むのは販売です。ところが、販売にかけている時間は、1日の半分しかなかったのです。会議や伝票書きなどの仕事が多く、その総コストは70億円にもなり、当時の利益が40億円だったので、仕事のやり方を変えれば最大で110億円の利益になると試算したのです。

 

そこで「販売に時間を割き、お客様が自分に関係ないと思う仕事はアルバイトでいい」とし、婦人洋品雑貨の売場をモデルに1年間やってみると、接客時間が9割も改善した人も出て、半年で業績が上がります。

 

そんな改革を行いながら、2003年の誕生日に社長に呼ばれます。「プレゼントかな」といってみると、社長就任の打診でした。ここに、役員経験のない、12人抜きの社長が誕生したのです。業界では、ちょっとしたニュースになりました。

 

世の中には、様々な業界があり、企業があります、改革のやり方は、それぞれ違うのでしょうが、小林さんは、「この仕事は、お客様にとって必要なこと?」というモノサシで改革を進めたのです。

 

あなたが、企業などの組織に属しているのなら、自分のモノサシを正しく作り、正しく使うことで、その改革は進められるのでしょう。時々、「今のままでいいの?」を考えることが大切ですね。