いつか死ぬなら絵を売ってから

クサガメのベビーが誕生しました。カメ池の陸地に産んだ卵を採集して保護しています。ざっと20個くらいの卵を保護していますので、たくさんのカメベビーが生まれそうです。今年も「里親募集」を行います。生まれたばかりのクサガメの飼い方を教えますので、どうぞチャレンジしてください。クサガメは、おとなしくて育てやすいカメです。

 

さて、今日は「いつか死ぬなら絵を売ってから」というコミックを紹介します。主人公の一希は、若くして住む所がないネットカフェ難民です。ビルの清掃をしながら日銭を稼いでいます。一希の心のよりどころは、幼いころから続けてきた絵を描くことです。

 

そんなある日、一希の作品を見たビルのオーナーが、一希の作品をアート市場に売り込もうともくろみます。一希は、不安に思いながらも、次第に絵を通して自分が社会に認められることの喜びを感じていくのです。

 

この作品は、社会的格差などの権力構造に対する批判的な視点が根底に貫かれています。それは、「窓」というモチーフを通して描かれます。一希は児童養護施設で育ちました。幼少期から施設の「窓」の向こうにある「家族・お金・学歴・人脈・機会」など、さまざまなものを持つ人たちのことを、自分とは異なる立場の人間だと捉えていました。しかし、アートの世界とつながる機会を得た一希にとっての絵は、「窓」を超えて他の人とつながる回路だったのです。そして、「価値を与える者と与えられる者」という力関係に疑問を持ち続けます。

 

哲学者のハンナ・アーレントは、この世界には「複数性」が必要だと説きます。それは、人々が自らの視点を何らかの形で表現し、それを世に出して対話することにより、自分と異なる他者性と出合い、世界がより豊かになっていくという考え方です。アートを通した一希の挑戦は、まさにこの「複数性」につながることですね。

 

保育園という集団生活は、他の園児から大きな影響を受ける環境にあります。まさに「複数性」が働いています。違いを認め、個性を尊重するこれからの時代は、保育園、幼稚園、小学校とう環境の中で、複数性を意識した取り組みが大切になってきます。

 

「みんなと一緒が安心」という考え方は、無くなっていくのでしょうが、この考えもまた、否定してはいけないのです。