屋上遊びが、アクティブになってきました。虫あみを持って、クマバチとモンシロチョウを追いかける子どもたち。そして、エンドウ豆がどんどん収穫できるので、子どもたちも豆を探して頑張ります。寺子屋の時間は、紙コップに屋上で咲いている花を集めて、ママへプレゼントです。菜の花の黄色・大根の白・ムスカリの紫・・・そして、野草もチョイスされました。素敵な贈り物です。
今日は、学童が舞台の小説「あえてよかった」を紹介します。主人公は、妻にガンで先立たれ、自暴自棄になった58歳の男です。私より、少しだけ年下のおじさんです。彼には子どもがなかったのですが、亡き妻から「子どもを育てる」を実践してほしいと頼まれるのです。そこで、働き始めたのが、学童保育所です。子育てをしたことがなかったおじさんが、令和の子どもたちと想定外のやりとりに巻き込まれる物語です。
ストーリーは、とても現実的です。親の離婚や発達障害、愛着障害、不登校など、子どもたちのさまざまな悩みや心の傷、ピュアな思いに触れていく中で、主人公のおじさんにも大きな変化があらわれるのです。心に残る一節を紹介します。
「僕が感じる今と、この子たちが感じる今とは、全く異質な経験なのだろう」
「子どもたちからは、望むような反応が返ってこない」
「学校教育という名の斧で翼は折られても、子どもたちはこの妙ちくりんな社会と、必死に格闘しながら生き抜こうとする」
「泣いても、わめいても、のたうち回っても、変えられないものってある」
「未完成な子どもたちのために、不完全な僕たち大人たちが、笑いながら、泣きながら一緒に成長していく」
「生きていく理由は、どこにでもあると、彼らの声、彼女たちの笑顔が教えてくれる」
どうですか・・・私は同業ですので、これらの言葉が、ビシビシ心に刺さります。
作者の「村上しいこ」さんは、童話作家ですが、彼女の人生は、壮絶です。子どもの頃、継母からずっと虐待を受けていました。暴力によるものはもちろん、言葉や嫌がらも。木の棒で殴られて頭に傷を負い、教室にいる時も、頭から赤い汁が流れます。クラスメイトからは気味悪がられ、みんなは逃げ、そしていじめられました。そして、村上さんは、ある日、親に懇願するのです。「殺してくれ」と。しかし、「おまえは家族の奴隷だ。殺すわけにはいかない」と言われるのです。童話作家になり、全国で公演を続ける日々を送る村上さんは、「私は生きていて、死ななくてよかった」と多くの人に語ります。
「あえてよかった」の小説の中の子どもたちは、課題を課題と認識することができないでいます。学童保育所の大人たちは、課題と認識しながらも、解決することができないでいます。どの学校の教師たちも、課題解決学習やプロジェクト学習などを通じて、子どもたちと関わっています。そして、子どもと一緒に成長しているのです。
最後に、亡くなった主人公の妻が、自分たちの子どもができた時に、読ませるつもりだった絵本が見つかるのです。それが、なんとも素敵なストーリーなのです。