宮藤官九郎脚本・阿部サダヲ主演で、史上最低の視聴率とうたわれた大河ドラマ「いだてん」と比較されて、今年の大河ドラマ「光る君へ」は、それに迫る勢いと揶揄されていますが、令和の時代に20%を超えるような高視聴率を求めること自体、無理な話ですね。モノサシが全く違います。まさに、現代は多様性の時代ですので、テレビを観ない若者が多くなりました。1人暮らしをしている私の次女の家にもテレビはありません。YouTubeなどオンラインの配信があれば十分なのです。
でも、私を含め、昭和バリバリ世代は、やっぱりテレビを観ます。新番組のドラマ「不適切にもほどがある」では、昭和の迷場面がたくさん出てくるようだったので、楽しみに初回の放送を観ました。100%娯楽作品として笑いに浸ろうと思っていたのですが、とんでもありません。令和の今を考える深い番組だったのです。
クドカン&阿部サダヲのコンビが、最も得意とするシチュエーションですね。
ファーストシーンから「おい!起きろブス!盛りのついたメスゴリラ」「うるっせいなあ!クソじじい!」「うるせいよ、クソチビ!」と、父と娘の不適切なセリフの応酬です。公共交通機関や学校の応接室で、プカプカとたばこを吸い、野球部のシーンでは、「ウサギ跳び1周」「水を飲むとバテル」「連帯責任のケツバット」と、今の科学的なトレーニング方法とは真逆のシーンに、私は「懐かしい!」と思ってしまいます。昭和のやり方からでも多くのプロ野球選手は生まれましたが、大リーグへの道を切り開いた野茂英雄や、世界の大谷翔平にはあり得ない光景です。
設定は1986年です。私は、大学生として就職活動をしていました。学生時代に、先輩に意味なく「個人面談」と呼び出され、意味なく「ケツバットだ!」とバットでケツを強打された恨みを、夏合宿最終日の夜の宴会で酔ったふりをして、その先輩をサソリ固めでやっつけたことは言うまでもありません。長州力の必殺技です。(笑)
喫煙については、今では「全車禁煙」が当たり前ですが、当時の電車は、禁煙車両が一両あったくらいです。タバコを吸わない人がカッコイイと言われるのは、まだまだ先の事でした。
こんな感じで、笑いながらドラマを見ていたのですが、最後の方で、考えさせるシーンが現れます。阿部サダヲのセリフですが、「頑張れって言われて、会社休んじゃう部下が同情されてさ、頑張れって言った彼が責められるって、何か間違ってないかい?だったら彼は、何て言えばよかったの?」「何だよ寄り添うって、ムツゴロウかよ。そんなんだから時給あがんねーし、景気悪いんじゃねーの?挙句の果てにロボットに仕事取られてさ」「こんな未来のために、こんな時代にするために俺たち頑張って働いてるわけじゃねぇよ!期待して、期待に応えてさ、叱られて励まされて頑張って、そうやって関わり合って強くなるんじゃねの?」
時代の流れというのは、過去をすべて否定して、新しいものを作り上げるのではありませんね。過去のいいところを残しながら、新たに変えなくてはいけない部分を作っていくような気がします。そう考えると、このドラマは、ざっと9割くらいは笑って楽しむのですが、1割は、昭和のいいところを令和でも引き継いでいかねば・・・を探す楽しみもありますね。
保育園ホワイトきゃんばすの園長は民間企業で働いていましたので保育園畑出身ではありません。でも、過去から続く保育園で決してなくしてはいけないことを保育園畑を経験した先生たちから学びます。でも、「これって本当に必要?」を変える決断をしやすいのは、保育園畑出身でないからです。
この「不適切にもほどがある」のドラマ・・・昭和って、本当に変だなぁ?と大いに笑いながら、「昭和から学ぶこともあるんじゃないの」という視点で観てみませんか。