数年前に、さいたま市の大宮区役所が移転して、併設された大宮図書館に卒園児の小学生を連れて行ったことがありました。この図書館は、今までの図書館のイメージを一新するようなつくりで、フリースペースがたくさんあって、階段状のステップスペースで、リラックスしながら子どもたちは好きな本を読んでいました。こんな図書館なら、きっと本好きの子どもになるんだろうなぁ~と思ったものです。
そんな子どもと一緒に本をのんびり読みたくなるような場所ができたようです。江戸川区に「魔法の文学館」が開館しました。ここには、児童文学作家の角野栄子(かどのえいこ)さんが選んだ約1万冊の本が並びます。
角野さんは、ご存じの通り、ジブリの映画になった「魔女の宅急便」の作者です。魔法の文学館の中には、魔女の宅急便に登場する「コリコの町」が再現されています。いちご色の子どもたちがわくわくするような空間です。
角野さんは、子どもの頃に読んだ「アラジンと魔法のランプ」で、ランプをキュッキュッと磨いて願いを言えばなんでもかなえてくれる・・・これを「なんか嘘くさい」と思ってしまったそうです。なんでも魔法でできてしまうのは面白くない・・・それは「魔女の宅急便」のキキに反映されているそうです。キキは、ドジで失敗もする魔女ですね。
角野さんが終戦後に読んで印象に残っているのが、竹山道雄の「ビルマの竪琴」だそうです。実は、私も中学の時に、この本が読書感想文の課題に出されたので、内容はよく覚えています。ビルマは、現在のミャンマーです。
戦闘で多くの兵士が死んでいくのをまざまざと見た水島上等兵は、ビルマで僧侶になります。仲間に、「水島、一緒に日本に帰ろう」と言われるが帰りません。死んでいった者たちをビルマに留まって、その魂を鎮めようと祈り続けるのです。「仲間と一緒に日本に帰ればいいのに」と・・・なんて、悲しい終わり方をするんだろう。と角野さんは思ったそうです。そして、物語は「ハッピーエンドが良い」と言います。
「魔法の文学館」には、物語を中心とした本が並んでいるそうです。並べ方はバラバラでジャンルや時代で分類もしていません。「自分の読む本は、自由に見つけてほしい」という思いからだそうです。角野さんは、「お薦めの過ごし方やお薦めの本はありません。お薦めがないというのがお薦め」と笑います。
子どもと一緒にテーマパークやショッピングに行くのもいいですが、たまには、子どもに「魔法の図書館にいって、好きな本を探してみよう!」と声をかけて、一日ぼっ~としているのもいいですね。慌ただしい日常の中で、贅沢な時間かもしれません。