サボテンの秘めた力

保育園に近いおうちに、まるで大木のように、庭にサボテンが地植えされています。「ウチワサボテン」という種類で、日本の冬を乗り切ることができるくらい強い品種だそうです。今日は、そんなサボテンの研究にとりつかれた、堀部貴紀(ほりべたかのり)さんの話です。

 

無数に生えた、サボテンのトゲには理由があります。動物から食べられるのを防いだり、大気中の水分を集めたりする機能があるそうです。砂漠などの乾燥した土地で生き残るために、茎の中に貯水組織を発達させており、10メートル級の「カルネギア・ギガンテア」は約7トンの水分を蓄えています。

 

堀部さんは、「サボテンが持つ驚異的なストレス耐性の仕組みを解明し、地球規模の食料・環境問題を解決したい」と言います。なんだか、サボテンが凄いことになっている感じです。

 

サボテンステーキを食べたことがありますか。私も以前「まぁ~珍しいから一度は食べてみないと・・・」と、おいしい味への期待ではなく興味本位で食べたことがありますが、オクラに似たような粘りと酸味があって、「なかなかおいしいじゃないの」と思った次第です。

 

堀部さんは、国内で食用サボテンを研究した事例がほとんどないことに着目し、自分がやろうと思ったのです。まわりからは「サボテンなんて、やめたほうがいい」と言われながらも、研究を続けます。

 

研究室の学生と遊びのつもりで、サボテンをコップの水に挿してみます。「乾燥に強い植物だから、きっと腐るだろう」と思ったものの、予想に反してサボテンは太く、大きく育ったのです。「サボテンは湿潤な環境にも強い」と2016年に論文で発表し、サボテンの水耕栽培に適した様々な条件を探るうちに、研究が軌道に乗ったのです。

 

食用サボテンを日本でも普及・定着させようと、各地の企業と連携し、ウチワサボテンの栽培試験を進めます。研究の中で、水耕栽培の水に、栄養素となる鉄分や亜鉛を入れてサボテンに吸収させ、栄養価の高い健康食品として実用化することを目指します。

 

食用だけでなく、サボテンは枯れた後も、大気から取り込んだ二酸化炭素を回収するなど、地球温暖化の対策としても貢献できる可能性もわかってきました。「謎が多い植物だけに『伸びしろ』しかない」と堀部さんは力を込めます。

 

「サボテンは、トゲに隠れた財宝である」・・・どうですか、サボテンのこれからに注目してみたくなりました。