上野にある「国立科学博物館」には行ったことがありますか。私の昭和時代の小学生時代の社会科見学では、恐竜の中でも「トリケラトプス」に魅せられました。草食恐竜にもかかわらず、果敢に肉食恐竜に立ち向かう姿がかっこよかったですね。そして、我が子を連れて行った平成時代でも、大人の視線で、「地球とは?人間とは?」を感じる場所でもあります。
そんな国立科学博物館が、標本や資料を適切に保管する費用などを集める目的で、クラウドファンディングを始めました。テレビのニュースなどでも大々的に取り上げられたので、ご存じの方も多いと思います。
そして、目標の金額1億円は、わずか9時間半で達成され、今現在、ホームページを開けると、支援者は44,389人で、金額は、驚くことに7億1735万5千円になっています。1人当たりの支援額は、16,160円です。お金持ちがドーンと寄付をしているのではなく、多くの人が支援していることがわかります。
今回のクラウドファンディングでは、リターンも魅力的で、研究者と共に施設を案内するツアーや、標本のレプリカがもらえるなど、悪く言えば、金を出せば普段体験できないことができるとあって、相当な金額に達した理由かもしれません。
でも?何かおかしいと思いませんか?この博物館は「国立」ですよね。その名の通り「国立」で運営されている博物館が、国民に対して「お金が足りないんで、ちょっと援助してくれませんか。もちろん、大切なことをしているので・・・」と言っているようなものです。たぶん、口に出さなくとも多くの人が、何で?と思ったことでしょう。
実は、国立科学博物館は国営ではないそうです。独立行政法人化で、国から切り離されたその後も、名称として「国立」が残っているだけだそうです。それでも、この博物館の予算の8割は国からの交付金で、そこに入場料収入が加わります。コロナ禍で、休館もあったので、ここ3年間の入場収入が激減したことが、クラウドファンディングに踏み切った理由です。
永岡文部科学大臣が、8月8日の記者会見で「国立科学博物館の取組みにですね、国民の皆様が理解・ご協力をいただけましたことは非常に感謝を申し上げます。今回のような博物館によります自主的な予算獲得の努力や国民の皆様方により、ますます支援を合わせ、国からの基礎的手当てによりまして、安定的で優れた博物館運営がなされますように取り組んでまいりたいと考えております」と発言しています。
国営と国立と何が違うんだと、私なんかは思うのですが、国立科学博物館の運営を「国民の皆様方による支援」に頼るのは、国としてはいかがなものか?とも思います。博物館にある、膨大な標本や資料は、まさに大事な国家遺産と考えれば、日本の文化として、国が100%守るというのが、筋だと思っています。
今後、国立科学博物館のようなクラウドファンディングが進むのには、違和感を覚えるのは、私だけではないと思います。