「本物」の体験

保育園で飼っていた「ウーパールーパー」が、朝、天国へ旅立っていました。職員が「シンディ」と名前を付けて子どもたちもかわいがっていましたが、生き物には必ず寿命があります。保育園では、様々な生き物に子どもたちは触れあっていますが、「生き物の死」も経験します。

 

しかし、いいことがありました。サマーキャンプ2日目で年長園児が、浴衣の生地で作った「フォトフレーム」が届きました。当日は、ほぼ完成の所まで子どもたちが作り、最後は着物の先生が仕上げて、世界で一つだけのフォトフレームになりました。サマーキャンプの思い出と共に、大満足の子どもたちです。

 

さて、子どもたちに「本物」を体験させようと、私たち大人は思うものです。今日は、都立小台橋高校の取り組みを紹介します。この高校は2年になると教科ごとのゼミに所属し、自ら課題を設定して学びを深めます。1年生の夏の課外授業は、その入り口として、興味・関心のある分野の魅力を発見し、志望を固めてもらうために「本物体験」の授業が用意されています。授業内容はこんな感じです。

 

神田神保町の古書店街巡り

英語で浅草の観光案内

美術館でマティス展を鑑賞

工房で風鈴づくりを体験

日暮里繊維街でミシンを習う

東京証券取引所で投資体験

 

どうですか・・・大人でもやってみたい内容ですね。実は、この高校は、中学時代に不登校経験者を主に受け入れるチャレンジスクールで、1年生は228人が在籍しています。そのうちの7割が、この夏に行われた「本物体験」に参加したそうです。

 

1年のサクラさんは、中2の秋ごろからクラスメートの前で食事をすることがつらくなり、体調を崩しがちになったそうです。いじめられたわけではなく、大きな問題があったわけではないけど、やがて登校ができなくなったそうです。「高校で美術を勉強したい」と考えていた時に、父親が小台橋高校を薦めたそうです。

 

4月に高校に入学すると、中学とは様子が違うことに、すぐに気が付きます。髪の毛を真っ白に染めてきた子も、ピアスをたくさんつけている子も怒られない。「みんなの個性がつぶされない。居心地がいい教室」と感じ、友達とお弁当を食べることもできたそうです。

 

彼女は、この「本物体験」での美術館鑑賞に影響を受けて、入学当初から迷っていた美術部に入部したそうです。「自分も大きな絵を描いて、来年には展覧会に出したい。そして、デザイナーや学芸員のような仕事に就きたい」と目標ができたようです。

 

プロスポーツ観戦だって、立派な「本物体験」です。職人・匠(たくみ)が作る逸品に触れることも、一流のシェフの料理を食べることも「本物体験」です。(こちらはお金がかかりますが・・・笑)

 

子どもたちが何に影響を受けるか・・・大人は、いい経験をたくさんさせてあげたいですね。