「怪物」

今週は、梅雨らしい天気が続きますね。今日は、「七夕飾り」の制作をしました。何種類かの飾りを考えているので、今日ですべてはできませんが、子どもたちのハサミの使い方がとても上手です。自由時間に、ほぼ毎日ハサミで工作する園児も多いので、慣れたものです。子どもたちの「願いごと」が楽しみですね。

 

さて、昨日は、カンヌ映画祭で「脚本賞」を獲得した、是枝監督の「怪物」を見に行きました。55歳以上は1,100円とう、シニアに優しい映画館です。

 

一人の小学5年生の少年の「担任に暴力を受けた」という嘘をきっかけに、息子の言うことを鵜呑みにして、周りが見えなくなる母親。いじめが起きている実態をつかめないまま、クラスの真実が見えない担任。「学校」を守ることが優先で、事実を隠す校長。いじめられている男の子の、酒に溺れる父親。学習障害・ジェンダーも盛り込まれた作品です。脚本が本当に上手くできていて、グイグイストーリー展開に引き込まれていきます。

 

母親・担任・校長・子ども・父親と、それぞれの立場で、「真実」の見え方がどんどん変わっていくのです。映画では、立場の違う登場人物に合わせて、同じシーンにフィードバックしていくので、「なんだ・・・真実はこうだったのか!」と、見ている方が、同じシーンなのに、見方が変われば、全く違うシーンとなってしまうことに驚き、圧倒されるのです。

 

1つの嘘から始まって、それは、またたく間に「見えざる怪物」の力で、周りの大人がすべて嘘に巻き込まれていくのです。同じシーンを多角的に見せることで、「自分が見ているものは、果たして正しいのか?」を観客に訴えているように思えました。

 

少年が「怪物だ~れだ?」と言うシーンは、予告編でも有名なセリフですが、もちろん、この映画の中で「怪物」の正体を明かしてはいません。「これを見たあなたが考えてください」という映画なので、最後は、スッキリせずモヤモヤします。

 

そして、この作品で何度も出てくるセリフが「生まれ変わる」です。主役のシングルマザーは、夫を事故で亡くしますが、それは夫の不倫旅行中の出来事で、息子は「お父さん生まれ変わったかな?」と何度もママに聞きます。「悪いパパが生まれ変わったかな?」という意味です。そして、主人公の少年二人も、今の自分を受け入れることができず、嘘をつきもがいているのです。

 

最後まで、モヤモヤする映画でしたが、ラストは、二人の少年が「生まれ変わった」のだと思わせるシーンで終わります。

 

登場人物が、それぞれにのしかかる「怪物」と闘いながらも、最後は、少年たちに希望の光を残したように見えました。

 

これを私たちの日常に当てはめると・・・是枝監督は「自分だけの視点でなく、モノゴトは、多角的に見ないと真実をつかむことが出来ない。真実を見逃せば、『怪物』によって、生活を破壊されることもある」と言いたかったのでしょう。

 

以上、おやじ園長映画評論家の解説でした。(浅いですね・・・笑)