日差しが心地よい日曜日の朝です。今日は、犬一匹と山小屋生活を始めた小川糸(いと)さんの話です。彼女は、2008年に「食堂かたつむり」で小説家デビューしました。この作品は、英語・フランス語・中国語・韓国語・イタリア語・ベトナム語・スペイン語など多くの言語に翻訳されて世界中の人々に読まれた作品です。1日1客の食堂は、事前にお客様と面談をして、その想いをかなえる料理が提供されるというストーリーです。
私が好きな作品は、「ツバキ文具店」です。NHKでドラマ化されたこともあるので、知る人も多いと思いますが、文具店とは名ばかりで、祖母から「ツバキ文具店」を受け継いだ主人公鳩子は、美しい文章をつくりあげる「代書屋」です。どうしても言葉に表せない、心の奥底の思いを、最高の形で手紙にするのが、なんとも言えないのですが、とても心地よいのです。「手紙」というアナログなところもいいですね。
そんな小川糸さんは、標高1600メートルの山小屋で暮らしています。彼女の暮らしはこんな感じです。
「太陽が東の空から顔を出す少し前に起き出して、鉄瓶でお湯を沸かす。外はまだ薄暗い。急須に茶葉を入れ、熱湯を注いでしばし待つ。そして、朝日がのぼるのを見ながら、お茶を飲む。こんな時、私は自分がものすごく幸せだと感じる。朝焼けの空の色は、毎日決して同じではない。曇りの日には期待したほどの日の出に出会えないし、雨の日なら尚更だ。でも、毎日同じように完璧な美しい茜色の太陽を拝めたら、逆につまらないかもしれない。今日はどんな空の色と巡り合えるのだろうと、ワクワクする時間こそが、人生のご馳走だ。
空だけを見ても、たくさんのご褒美がある。夜空を埋め尽くす満天の星もその一つだ。見事なまでの星空と、地面に大の字に寝転がって対面する。なんて幸せなんだろう。空は、万人に与えられたもの。探せば、幸福はいろんなところに隠れている。
日々は、淡々と同じように過ぎていくけれど、少しずつ色や形を変えながら、私に宝物を与えてくれる。人生は、宝物を探す旅。これからも、穏やかに続けていく」
作家ゆえに、仕事場を選ぶことなく山小屋生活もできるから・・・なんて思わないで、私たちの生活の中でも、十分宝物を探す旅は十分できますね。