昨年3月に開設された、無料相談サイト「あなたのいばしょ」は、24時間365日誰でも利用が可能だそうです。開設から1年あまりを経て、いまでは10~20代を中心に毎日平均600軒の相談が寄せられます。
相談員はボランティアで、研修中の人を含めると、国内外の日本人約700人が努めます。相談者との対話は、「受容・共感・肯定・承認」の過程をたどる傾聴だそうです。
相談員の一人は、「まずは相談者の話を全部受け止める『受容』が大切です。苦しい気持ちに『共感』したり、悩むことを『肯定』したりもします。対話を通して相手を『承認』するという流れです。相談は、1回40分が目安で、2時間を超えることもあります。本当の気持ちを吐き出してもらいながら、場合によって相手と異なる視点も伝えます。結果、『そんな考え方もあるのか』と気づいてもらい、心理的に追い込まれた状況を緩和できることもあります」と言います。
具体的には、「学校でも社会でも、実際に入ってみたら想像していたのと違う感じ、なじめないと思うことは誰にでもあるはずですよ」と返すと、中学、高校生は「えっ、そうなんですか?」と反応するそうです。大人になった私たちは、自分の思い通りにものごとは進まないことなど、当たり前に感じますが、中高生にとっては、このようなことが、不登校やひきこもりの原因になってしまうのです。
もう一つの問題は、親の過干渉や親の子どもに対する「自己責任」論の使い方です。
「日本人の母親の多くは過干渉です。宿題や作文でも、とにかく子どもに失敗させないようにと途中で手を出し過ぎて、きれいに整えてしまう。本当に閉口させられます」
「夫がワンマンで、子どもにも『何事もやるか、やらないか、だ。やらないのはお前が悪い』という自己責任論者です。子どもは私たちの前で弱音を吐けなくなり、とくに父親がいると、自室に引きこもるようになりました」
相談員の一人は、親子がまじめになりすぎて、余裕を失うと言います。「子どもが、『学校に行きたくない』と言い出したら、親は途方に暮れて当然です。しかし、学校に行くにせよ、行かないにせよ、多くの親は早急に『正解』を子どもに示さなければ、と考えがちです。むしろ、親は途方に暮れる姿をありのまま子どもに見せて、『立派な大人』であろうとすることを一度やめてみたらどうでしょうか。すると、子どもも時には、礼儀正しくしなくてもいいし、ありのままでいていいんだと、気づくきっかけになるかもしれません」
では、親は子供とどう向き合えばいいのでしょうか。家庭でも、受容→共感→肯定→承認の傾聴を実践することだと言います。子どもの話に途中で口をはさまず、まずは全部を受け止めることが大切なのです。
保育園の子どもたちの話にも、通じるところがありますね。