この連休は、「生き物の死にざま」シリーズを続けます。今日は、ミノムシことオオミノガです。最近は、あまり見ることが少なくなり、保育園の屋上でもめったにお目にかかれませんが、ミノムシの正体は、オオミノガという蛾の幼虫です。
私も知りませんでしたが、ミノムシのメスは、一生蓑(みの)を出ることなく生涯を閉じるのです。いやいや・・・何という運命でしょうか。
ミノムシは、枯れ葉や枯れ枝で巣を作り、その中にこもって暮らします。この様子が、粗末な蓑を着ているように見えることから「蓑虫(ミノムシ)」と名付けられました。こうして、蓑で外敵から自分を守りながら、蓑の中からときどき顔を出して、まわりの葉を食べたり、上半身を出して移動したりして暮らしています。そして、冬になる前に蓑を枝に固定して、蓑の中で冬を過ごします。私たちが見るのは、冬に枝にぶら下がっている姿ですね。
春になると、ミノムシは蓑の中でさなぎになり、成虫の蛾になって蓑の外に出ます。しかし、外に出て飛び立つのはオスだけです。メスは、春になっても巣の外に出てくることはありません。巣の中でさなぎになり、成虫になりますが、その後も巣に留まります。そして、顔だけを出して、成虫となったオスのミノムシをフェロモンで呼び寄せながら、オスが飛んでくるのをじっと待ち続けるのです。
蓑の中のメスは、成虫になってもハネも足もありません。ウジ虫のような姿をしています。ハネを持つよりも体を太らせて、たくさんの卵を産むほうがいいからです。メスを見つけたオスは、蓑の中に腹部を入れて、メスと交尾するのですが、オスとメスはお互いの顔を見ることなく交わるのです。
オスにとっては、美しく雅なひと時となるのですが、この儀式が終わると、オスは死んでしまいます。残されたメスは、蓑から出ることなく、蓑の中に卵を産みます。そして、静かに生涯を終えるのです。
母の存在を知ることなく、卵から生まれた幼虫は、蓑の外に出て、糸を伸ばして垂れ下がり、風に乗って新たな場所を目指して飛んで行くのです。
日本には、たくさんの離島がありますが、一生島から出たことがない高齢者もいるのではないでしょうか。しかし、その人たちは、決して不幸な人生ではありません。故郷の島で一生を終えることは、幸せなことかもしれませんね。
ミノムシのメスも、一生を蓑の中で暮らしていても、それはそれで、十分に幸せなのかもしれません。