大人の昔話⑥「春夏秋冬」

古くから日本人は自然と共に生きてきました。日本に「四季」があること、農業などの自然相手に暮らしていたことが関係していますが、日本人の感性は日本の自然が育んだものですね。

 

今日は、昔話の中に潜む「春夏秋冬」を垣間見ることにします。

 

「春」は旧暦では1年の始まりを告げる季節です。「一寸法師」の物語には、早春を連想させる花が登場します。

 

一寸法師が武士になろうとして都に上る途中、川が流れている場所を蟻に尋ねると、「タンポポ畑のところ」と教えられます。そして、川にお椀の船を浮かべて下っている途中、魚にエサと間違われ、やっとの思いいでたどり着いた都で大きな屋敷を見つけ、そこで奉公するすることになります。

 

そこには美しい姫がいて、その姫が一寸法師を連れてお宮参りに出かけると、「桜の木」の影から鬼が飛び出し、姫をかどわかそうとするのです。

 

「一寸法師」では、タンポポや桜など、随所に春を思わせる記述が見られます。春の昔話

には、どことなく気分が明るくなるような話が多いのです。

 

「狐の嫁入り」といわれる現象は、空は晴れているのに雨が落ちてくる天気雨のことを指しています。また、嫁入り行列の提灯のような光の列が夜に浮かび上がる怪火も「狐の嫁入り」と呼ばれています。

 

これは、昔から狐が人を騙すといわれているところから、怪異な現象と結びつけられ、日本各地に伝わる「狐の嫁入り」にまつわる話では、必ずといってよいほど、日中ならば天気雨が降り、夜は怪火が見られるのです。「天気雨」が降るのは「夏」ですね。

 

実りをもたらせてくれる「秋」は、日本人にとっては、特別な思いで迎え入れる季節です。

 

「猿カニ合戦」では、猿は拾った柿の種を、蟹の持っていたおにぎりと交換しますが、柿という果実が秋という季節を表しています。

 

「桃太郎」の場合は、季節を知るカギは「桃」と「きび団子」です。桃は初秋、きびは仲秋を表す季語になっています。現代では、桃は夏の果物ですが、「桃太郎」の物語は、秋の物語と読み取ることができます。

 

「冬」の代表的な昔話といえば、「笠地蔵」ですね。ホワイトきゃんばすの3年前のクリスマス発表会では、年少園児が演じたおじいさんおばあさんが圧巻の演技を見せてくれました。伝説の劇として記憶に残っています。

 

大晦日に笠が売れず、売れ残った笠をお地蔵様にかぶせてあげて帰ってきたおじいさん。おかげで、何も食べずに年を越すところ、お地蔵様がお礼に来てくれ、大判小判やたくさんの食べ物を持ってきてくれた、誰もが知る昔話です。

 

寒い冬だから、人の親切が余計に温かく感じられますね。まして大晦日は特別な日です。「笠地蔵」を読むたびに、人に施す気持ちを忘れないようにしたいと思いますね。

 

どうですか・・・もともと農耕民族であった日本人にとって、季節の移ろいは現代人が考えるよりもずっと大事なことであったようです。昔話のなかに、「春夏秋冬」を垣間見るのも、大人になってからの楽しみ方かもしれませんね。