昔から、病魔退散に深く関わってきた「予言獣」の記録が多く残されています。令和2年、今、世界は新型コロナウイルスという目に見えない病の脅威に晒されています。そんな中で、一躍脚光を浴びているのが「妖怪アマビエ」です。
江戸時代の弘化3年(1846年)に肥後国(熊本県)に出現されたとされる妖怪で、「当年から六年の間は豊作だが、病が流行る。その時には、早々に私の姿を写して人々に見せよ」と言って海中に入ったといわれています。
妖怪ですが、人魚のようで、どことなくかわいさを感じる姿に、SNSによって、一気に全世界へ拡散されました。アマビエをモチーフにしたお土産も発売されているようです。
アマビエの27年前、江戸ではコロリと称する赤痢が大流行しました。感染すると、あっという間に命を落とすことからコロリと命名されたと言われています。この時も「姫魚」と呼ばれる予言する妖怪が各地で話題になったそうです。
頭に2本の角を持ち、女の顔で、それ以外は魚の姿をしています。「竜宮の使い」と名乗り、「我姿を見るとよい」と説いたと言われています。「人魚」をモチーフにした逸話は、世界中にありますね・・・「妖怪」というよりも、庶民にとっては、親しみのある存在だったようです。
人間の顔に牛の体をしたクダン(件)も江戸時代後期に出現した予言獣です。クダンは、明治に入ると疾病だけでなく、戦争の予言もするようになります。明治42年6月21日の「名古屋新聞」では、10年前に肥前国五島の奧島でクダンが生まれ、生後31日目に「明治37年には日本は露西亜(ロシア)と戦争する」と言って死んだそうな、という記事が見られるそうです。
第2次世界大戦の末期にも、クダンが生まれて予言をしたとの噂が広がりました。「戦争の終局近し」とか「日本は戦争に負ける」と言って死んだそうです。
昔から、私たち人間は、疾病の流行や戦争という惨事に直面した時に、人間の力ではどうもできない状況をこうして「予言獣」に託したり、すがってきたのです。コロナ禍において、早く、このような妖怪が話題にならない世の中になることを祈ります。