公立学校の教員採用試験で受験資格から年齢制限をなくす動きが全国で広がっています。2019年度の採用では、31の都道府県や政令指定都市で年齢制限をなくしたそうです。
千葉県市川市では51歳の新人先生が誕生しました。「初々しさはないけど、保護者が何を求めているかが分かるのは強みです」と真田澄子教諭は語ります。
元々教員を志し、大学で小学校の教員免許を所得。「民間企業の経験は教育にも生きる」と考え、まずは大手飲料メーカーに就職します。ところが、バブル経済の崩壊で安定職業として教員人気が高まり、教員への転職を断念します。
結婚後、3人の子育てが一段落した頃から、教育への思いが再燃。2016年度から特別支援学級の補助員を務め、18年は臨時採用の教員として学級担任を経験し、19年に正式に教員採用試験に合格したというストーリーです。
どうですか。民間企業での経験、結婚子育て経験、特別支援学級の経験、臨時採用教員の経験を持つ人ですので、保護者としては安心して子どもを任せることができますね。
こうした、年齢制限撤廃の動きの背景には、公立小学校の教員採用試験の受験倍率低下があります。2019年度は全国平均で2.8倍と過去最低となったそうです。優秀な人材が、他へ流出している実態もあるでしょう。
私は過去に、民間人の一人として、さいたま市の教員採用試験の面接官をさせてもらったことがありますが、「教員の仕事がしたい」という熱い気持ちは、ある程度年齢や人生経験を重ねた臨時採用の受験者に多かったですね。「教員も公務員の一つ・・・安定した仕事」と考えて受験する新卒者と比較すると、教育への想いには雲泥の差がありました。
子どもたちが、社会に出て大人として世の中を渡り歩くには、学問の他に、生きるすべを教えてくれる先生が必要です。子どもたちが「自分で考える」ことを促す先生です。
学校外の経験を持つ社会人がもっと採用試験を受けやすい環境が整えば、教員を目指す層が厚くなり、教育現場に多様な価値観がもたらされます。多様な価値観とは、「答えが一つではないこと」「答えは自分でみつけないといけないこと」など、これからの時代を生き抜くには必要な力です。
間違いなく、この流れは加速していきます。子どもたちにとっては、プラスの材料となりますね。日本の教育がもっと良くなっていくのです。