いだてんロス

いよいよ明日はクリスマス発表会です。子どもたちは、「楽しみ!」とワクワクしていますが、中には、子どもよりも緊張している保護者もいます。(笑)

 

さて、大河ドラマが終わりました。毎週日曜日は、楽しみな大河ドラマを飲みながら見るのが私の大切な時間です。「いだてん」について、今年も、元仕事仲間のコメントを紹介します。 

 

『今からもう三十年ほど前になるが、民放で「知ってるつもり」という番組が放送されていた。

毎週、ある人物を取り上げ、その人生をたどる過程で隠れたエピソード等も加え、名前だけでほとんど知っているつもりになっていた人物像を改めて明らかにするという番組であったが、良い意味でイメージを大いに覆されるという事も多かった。結構、長寿番組だった記憶がある。

この番組の特長は、単なる偉人だけではなく歴史の片隅に埋もれそうな近現代のこれまで知名度の高くなかった人物を多く取り上げたことである。

今ではすっかり有名になった「命のビザ」の杉原千畝など、この番組ではじめて知った人物も多かったが、その中に今回の「いだてん」の主人公のひとりである金栗四三も含まれていた。

日本初のオリンピック選手として参加したマラソン競技で、途中日射病で倒れ、近隣の農家で翌日まで介抱された為、公式には「競技途中で行方不明」扱いであったが、約半世紀後に、その大会を主催したスウェーデンオリンピック委員会からストックホルム大会の開催55年記念式典に「完走要請」として招かれ、競技場をゆっくり走ってゴール地点のゴールテープを切り「日本の金栗、ただいまゴールイン、タイムは54年8ケ月6日5時間32分20秒3。これをもって第5回ストックホルム大会の全競技を終了します」とアナウンスが流れたというエピソードが番組で紹介され「何て粋な計らいをするのだろう」と感動した記憶がある。

その放送から約29年後、奇しくも、今年の大河ドラマ「いだてん」では、最終回のエピローグとしてこのエピソードが取り上げられ、当時の実際の映像がラストシーンとなった。

低視聴率、出演者の逮捕や脱税の疑惑等、今年の大河ドラマ「いだてん」では負の面での話題が尽きなかった。

数年前に大ヒットした朝ドラ「あまちゃん」のシナリオを書いた宮藤官九郎を起用して来年のオリンピックを睨んだ企画だったが結局、視聴率的には惨敗。ただ、小学校5年生の頃に放送された「国盗り物語」以来、長年大河ドラマを見続けている私から見て、今年の大河ドラマは近年になく面白かったと思う。

チャンネルが地上波の数局に限られていた昭和の時代から、BS、CS、ネット配信等、多チャンネル化が進んだ現代で、当然ながら昔の様な視聴率を取る事など今や不可能だし、世代が変わって時代劇離れが進んだせいか、民放で時代劇の帯ドラマを見る事もなくなった。

「大河ドラマ=時代劇」というイメージもあるのか、過去から、近現代を扱った大河ドラマは視聴率的にはほとんど失敗していたせいか、明治以降の時代が題材になる事はほとんどない。

中学や高校で学んだ日本史は授業時間の関係でほとんど明治時代に入るか入らないかで終了し後は省略、我々は近現代の歴史に関してはほとんど馴染みがない。この時代を取り上げた作品が少ないのはそういった事も原因かも知れない。

視聴率至上主義の中で、個人的には視聴率と作品の出来栄えは余り関係なく、あくまでも作品を実際に見て良い作品か否かを判断しなければと思っている。

オリンピックどころか「スポーツ」という概念が全く無かった明治の時代から、一旦招致に成功しながらも日中戦争の勃発の影響で返上、第二次世界大戦後、敗戦国として改めて招致活動、開催に至る遥かな道のりを、最終回でタクシー運転手としてカメオ出演された宮藤官九郎の脚本は「あまちゃん」と違って歴史的な事実が大きな制約となる登場人物を、古今亭志ん生という落語家とその家族の歩みを並行させ、数少ない架空の登場人物と絡めた見事な伏線で結びつけ、実際の数々のエピソードや、後半の「田畑政治」編からは歴史的な事件とオーバーラップする場面を増やしながら見事に描き切ったのではないだろうか。

元々、人気劇団「大人計画」の座付き作家なので、物語の展開が舞台的でスピーディー。放送前半の頃、場面が明治から昭和にしょっちゅう飛んだり戻ったりするので、私の両親も話の展開についていけないとよくこぼしていた。毎日放送される朝ドラと異なり週に一度の大河ドラマはあらすじを覚えておくのも大変で馴染みのない内容(時代)では、なお一層の事である。

ただ、もう「忠臣蔵」や「信長」「秀吉」「家康」のドラマには飽き飽きした。

「勝海舟」で革新的な大河ドラマを目指しながら途中降板のやむなきに至った倉本聰は、その後、「北の国から」現在放送中の「やすらぎの刻~道」に至るまで優れた作品を数多く書き続けられているが、あの時、もし大河ドラマを降板しなかったら富良野に移住する事もなく「北の国から」は生まれなかったかも知れない。

三谷幸喜も「新選組!」から十数年後の「真田丸」で、大河ドラマの枠の中で見事にリベンジを果たしている。なぜか今日の最終回では東京オリンピックを映像として残す、市川崑監督役で俳優として出演されていた。

宮藤官九郎もまたいつか新たな歴史ドラマの魅力を持った作品を生み出す機会をNHKが与えて示して欲しいなと視聴者のひとりとして切に望みたいのである。

それにしても、とにかく明日から「いだてん ロス」になりそうだ。』

 

はい。今回も無断掲載です。仲間なので、いいのです。

ちなみに、彼は、映画評論家でもシナリオライターでもプロデューサーでもありません。おやじ園長とよく飲みに行く、ふつうのおじさんです。(笑)