ミライをつくった人④J・K・ローリング

よくスポーツの世界などでは、「世代交代」が今後の日本の課題だ・・・なんて、言われますね。この「世代交代」の意味は、体力などの肉体的な事の他に、考え方も含まれます。

 

ある中学の野球部の話です。「1年生は球拾いをする」という習慣化した暗黙のルールがありました。1年生は、球拾いをする時間に普通の練習ができればどれだけ成長できるか・・・と思っています。しかし、3年生は聞く耳を持たないでしょう。2年生だって「おれたちも1年の時は球拾いばかりだった。お前たちも頑張れ!」と言われる可能性が高いです。

 

結局、3年が引退し、翌年2年が引退し、1年だったみんなが「1年生の球拾い禁止」を実行し、それが「常識」になります。こう考えると、世の中が変わるには、「世代交代」

が重要となるのです。

 

「古い世代の人たちに世界を変える力はない。世界を変えるのは、いつも『新人』なのだ」と「科学革命の構造」の著者トーマス・クーンは言います。新人とは、どびっきりの若い人。あるいは別の分野から参入してきた「よそ者」や「シロウト」だそうです。

 

J・K・ローリングは、シングルマザーとして生活保護を受けながら、幼い娘を育て、仕事も収入もないギリギリの状況で「ハリーポッターと賢者の石」を書き上げ、世界一裕福な作家になりました。

 

誰からも相手にされなかったシロウトの「新人」が、出版業界や映画業界の歴史まで塗り替えてしまったのです。

 

有名な話ですが、最初は、どの出版社からも「ハリーポッター」の出版を断られます。当時のイギリス出版業界では、「児童書は売れない」かつ、児童書の適切な長さが4万語とされているのに、「ハリーポッターと賢者の石」はその2倍以上、9万語を超える超大作です。こんな分厚い本を子どもたちが読むはずがない、しかも、名も知らない女性のデビュー作だし・・・ということで、12社がNGでした。

 

そんな中で、唯一出版にGOサインを出したのが、ブルームズベリーという出版社です。しかし、「新人」作家の才能に惚れ込んでの契約ではありません。分厚い原稿を家に持ち帰った社長は、なかなかそれを読む気になれませんでした。すると、8歳になる娘が勝手に読んで、「パパ、これはほかのどんな本よりもおもしろいよ」と感想を言います。これがきっかけで、ハリーポッターが世界で羽ばたくことになったのです。

 

出版業界をよく知るベテランたちは、まともに中身を検証することなく、「児童書としては長すぎる」「児童書は売れない」と自分たちの常識だけで作品の価値を判断しました。たくさんの本を読み、たくさんの作家を見てきたはずの彼らでさえ「ハリーポッター」の本当の価値を見抜けなかったのです。

 

J・K・ローリング自身も「新人」でしたが、最初の読者も「新人」でした。こうして、世界を席巻したハリーポッターの物語は、「新人」たちによって生まれたのです。

 

我が家にも、長女が夢中になって読んだ「ハリーポッター」シリーズの本がズラリと並んでいます。長女が最初に夢中になって読んだ本です。

 

「新人」が世の中を変えると言いましたが、「新人」とは、年齢的に若いということではありませんね。日本で初めて日本地図を作った「伊能忠敬(いのうただたか)」氏は、人生50年と言われた江戸の時代に、50歳になってからこの異業を達成します。

 

女性として、アジア人として初めて、国連の難民高等弁務官に選ばれた「緒方貞子(おがたさだこ)」さんは、1991年から10年間にわたって紛争地域の最前線で活躍し、世界じゅうから「小さな巨人」と称えられました。何と、63歳からのスタートです。

 

また、「新人」の反対の「ベテラン」は、決して、固定概念を持った人だけではありません。ずっと第一線で活躍してきた「ベテラン」は、常に自分を変化させていますね。変化に対して柔軟です。

 

さて、明日の世界を担う子どもたちは、若者であり「新人」という大きな武器を持っています。大人には考えつかないようなアイデアがあり、フットワークが衰えた大人たちとは比べものにならない行動力が、そしてどんな大富豪がお金を積んでも買えない「時間」があります。

 

しかし、若者には大きな弱点があります。それは「経験」の不足です。

 

若者が世界を変えようとするときに、自分の夢をかなえようとするとき、周囲の大人たちが応援してくれると思ったら大間違いです。大人たちが応援するのは、自分の地位を脅かさない若者だけ・・・つまり「世界を変えない若者」だけです。大人たちからすれば、若者の手で世界を変えられることは、大迷惑と考える人が多いのです。「君たちには経験がない」という理由で・・・

 

これを読んだ、大人のあなたは、若者が世界を変える支援者になってください。そして、若者が「賛成する人がほとんどいない」状況になっても、怒られ、笑われ、バカにされても、最後は、若者が「自分で考えて」ミライの扉を開けることができるように、見守っていきましょう。

 

あっ・・・まだ私たち大人が「新人」になることだって可能ですね。

 

保育園がお盆休みにつき、「ミライをつくった人」の企画ブログにお付き合いいただき、ありがとうございました。世の中には、まだまだ多くの「ミライをつくった人」がいます。そんな人たちの行動が、子どもたちへ、そして、まだ「新人」の可能性が残されている私たち大人にも参考になりますね。