2017年4月現在、全国の公立小中高校、特別支援学校で78人の民間人の校長先生がいるそうです。私立を含めると、この数倍になります。
2000年4月に、学校教育法が改正され、教員免許を持たなくても、校長への登用が可能になりました。これを機に、全国で、民間企業出身などの、いわゆる民間人校長が脚光をあびるようになります。民間の経営感覚や発想を生かし、今までの学校風土を活性化する・・・といった内容で、プラスに報道されることが多かったですね。
しかし、現実は、すべてがうまくいっているわけではなく、民間人校長と教員との摩擦が表面化し、様々な問題が発生する事例もあったようです。
民間企業で、一般的に仕事ができると言われる人は、林先生の「いつやるの?今でしょ」ではありませんが、仕事のスピードが抜群に早いです。私も、サラリーマン時代に、打合せの途中で、何かいいアイデアが浮かんだら、すぐにその場で、その筋の専門家へ電話をしてアポを取ってしまうような「やり手」を何人も見てきました。
民間企業では、「これはいける!」と思ったことをすぐにやらないと、ライバル企業に先を越されてしまいます。失敗を恐れて、チャレンジしない人が評価されないのが常です。
しかし、日本の学校は、極端な言い方をすれば、「石橋を叩いて渡らない・・・」「チャレンジして失敗をするくらいなら、失敗しない方が、出世できる」的なところがあります。私が、PTAで学校や先生たちとかかわった時は、企業論理は通用しない世界でした。そして、今、イエナプランの勉強会で、様々な環境の学校の先生たちと、話をしますが、その傾向は、今も大きく変わっていません。
そんな環境の中へ、「スピードだ!」「失敗を恐れずチャレンジせよ!」と民間人校長が旗振りをするには、それなりの対策と対応が必要となるのです。
大阪市立太子橋(たいしばし)小学校では、2014年春に、大手英会話学校の運営会社に20年勤務し、人材派遣会社の経験もある女性校長が、公募で採用されました。「地域に開かれ、世界につながる学校」を教育目標の1つに掲げます。
スピードアップで、どんどん新しいことを行います。インターネットの無料テレビ電話「スカイプ」を利用し、海外の学校との交流を図ったり、国際交流団体の協力を取り付け、エジプトやロシアなどの外国人講師による出前授業も全学年に取り入れます。
しかし、「理想は立派だけど・・・英語よりもまずは国語でしょ・・・」と矢継ぎ早の試みに、教員からの反発があったそうです。そんな経験から、「強引にやっても裏目に出るだけ」と気づき、職員室に「目安箱」を置いて、教員の率直な意見を聞くようになったそうです。
「周りを動かすには、まず相手を知り、トップ自ら動くこと」とやり方を変えます。今では、教頭が「どの試みも今までの学校になかった発想。民間ならではのスピードを感を感じる」と言うほど、民間校長の改革が広がっているようです。
「学びたいという意欲を育てるのが教育。教員の力を引き出し、子どもたちに世界の多様性に触れる面白さを伝えたい」と、民間校長はチャレンジし続けています。
学校に限らず、民間企業においても、今までと違う発想を持った人間が、多く意見をぶつけ合う環境が、これからは必要になってきますね。私たちも、自分と全く考え方の違う人の意見に対して、聞く耳を持つと、新しい扉を開くことができるかもしれませんね。