障害がある子と、障害がない子が共に育ち合う「インクルーシブ教育」の理念を背景に成立した障害者差別解消法は、この4月から施行されます。
もちろん、これまでも各学校で障害児やその保護者に対しての配慮など、様々な取り組みが実践されています。この法律の施行で、4月1日付で、学習指導要領が改定されることはありません。しかし、差別の禁止はもちろんのこと、公立学校では、「合理的配慮」が法律上義務化されることになります。「合理的配慮」という言葉を具体的に実践することからのスタートと言えます。
障害の有無を問わずに生徒を受け入れている私立の総合学科高校の教員は、授業改善の具体的内容として、「板書を書き取る時間を十分に設け、生徒が書きながら教員の説明を聞くという状況をつくらない」「自由課題のレポートなどで、題材を自分自身で選び作成することが難しい生徒には、題材をいくつか用意し、その内容をまとめてくるよう指示を出す」と話します。
子ども一人一人の状況に応じて無理のない範囲で手を差し伸べることが、「合理的配慮」という考え方ですが、子どもたちの障害の状況も一人一人違うので、まさに、様々なケースを具体的に積み上げていくしかありません。
さて、ある小学校の保護者会でのことです。「私の子には、障害があります。十分にしつけますが、障害の特性のため、ご迷惑をお掛けするかもしれません」と保護者の発言がありました。しかし、「その日」はやってきてしまいました。その児童が仲間の一人の体に画びょうを指してしまったのです。
この経過に立ち会った校長先生は、画びょうを刺された児童の保護者は、保護者会で聴いた言葉を忘れていなかったので、画びょうを刺した子を責めることをせずに、学校側に対して画びょうの管理を考え直してほしいと要望を出すにとどまったと言います。
この4月から施行される「障害者差別解消法」を機に、学校や教員の授業内容などの具体的な配慮だけでなく、画びょうの保護者のような、まわりの大人の認識が変わるような世の中になっていかねばなりません。
時間はかかります。でも、言葉だけでなく行動を伴った「違いを認める。受け入れる」という国に、いつか日本もなってもらいたいですね。もちろん、私たちが変わらねばなりません。
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