ある金曜日の午前10時。開店準備中の居酒屋「養老の瀧」池袋南口店の客室の一角で、数人の高校生が静かに勉強しています。
これは、不登校や高校中退を経験した児童・生徒を対象とした学習塾「学力会」が今年から始めた「養老の瀧」との連携です。
「塾は、受験で学力の高い学校へ進学させるのが使命だが、これは、子どもたちに『働く』ことを教えている。教育者はもっと、社会貢献できる人材の育成を目指すべきではないかと思う」と、学力会代表の杉浦さんは語ります。
「学力会」の教育目標の1つは、引きこもりの未然防止だそうです。不登校や高校中退は児童・生徒のひきこもりの要因になるが、約70万人と推定された15歳から39歳までのひきこもりの理由の多くは「職場になじめない」「就職活動がうまくいかない」というもので、代表の杉浦さんは「僕ら教育者が、子どもたちに社会貢献、つまり『働く』ということを教えられていない」と課題を指摘します。
「養老の瀧」との連携では、生徒が平日の午前9時から客室を教室として、教科学習や資格所得のための勉強などを行います。そして、居酒屋営業が始まる午後3時には、営業ができるよう机を整理、客室を清掃。ここで、社会人に必要な「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」を身につけさせることができるという内容です。
また、生徒は養老の瀧社員研修ホールで研修を受けたり、希望者は同店でアルバイトをして、社会貢献活動を実践的に行っているそうです。
何らかの理由で、不登校や学校中退となった生徒に、再度学ぶ機会が与えられ、最終的には社会貢献できる人材に育てていくという流れは、ドロップアウトしてしまうかもしれない一人の若者が、大人の社会に向かっていくうえで、意義ある取り組みだと考えます。
代表の杉浦さんは、保健室登校から復帰した自らの苦い経験を生かして、この取り組みを作り上げたそうです。そこには、自分ひとりの力だけでない、多くのサポートを感じたに違いありません。
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